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大きいメガネのエッセイ
「大きいメガネを販売して20年」
メガネのアイトピア社長  岡本隆博
顔幅の広い人は出世型

当店が開店したのは、いまから約30年前、昭和51年のことであった。

当店の場合、ビジネス街立地ということもあり、
近隣のサラリーマンのかたが、よくご利用くださるのであるが、
そのうちに、私はあることに気がついた。

会社に勤務する人たちは、概してトップに近くなればなるほど、
顔の幅が広い人が多くなるのである。(もちろん、例外もあるが)

また、自営の人、自由業の人においても、がんばってよく稼いでいるような人には、顔の幅が広い人が多いのである。
俗に「あの人は顔の広い人だ」と言えば、それは物理的な顔幅の広さではなく、
交際範囲が広くて豊富な人脈を持った人のことを言うのであるが、
おもしろいことに、そういう人は実際に顔の横幅が広いことが多いのである。

また、そういう人は顔だけでなく肩幅もあって、いわゆる「恰幅の良い紳士」という感じなのであるが、
とにかく、当店の開業のころには、店に在庫していた男性用枠では横幅が足りずに、
わざわざ卸屋さんに頼んで大きい枠を探してもらったり取り寄せたりしたこともよくあった。

一言で言えば、顔幅の広い人物は「出世型」の人物であると言えるのではないだろうか。

ビッグサイズ枠を200本集めて

そうこうするうちに、当店は20年ほど前に、店舗の大改装をしたのであるが、
そのときに思い切って、大きい枠を思いっきりたくさん集めて、キングサイスフレームコーナーというのを作った。

メタル枠、セル枠を合わせて、60mm以上のものを200本近く集めたのだが、
メガネ屋さんなら、そう聞いただけで「それはすごいキングサイズコレクションだな」とわかると思う。

それで、せっかく多額の在庫投資をして大きいメガネのコーナーを作っても、
大きい顔の人が来てくれなかったらナンにもならないということで、
大阪市内を走るバスの中の広告や新聞の窓広告などもしてみた。

店の前の道路に「ビッグサイズ」と書いた大きなメガネ型の看板を置いたりもした。

その看板は、大阪市のメインストリートである御堂筋に面しているというせいもあり、
けっこう目立ったので、そこそこに宣伝効果もあり、
大きい枠を探しているかたがたが、前にも増してご来店いただくようになった。

「おお、これはいい。こんなに多くの枠の中から自分の顔に合うメガネが選べるなんて!」
と喜ばれたり、感謝されたりしたことも、一度や二度ではなかった。

ところが、メガネにも、ネクタイの幅のような流行がある。
10年余り前から大きい枠はだんだんにはやらなくなり、小さな枠が主流となった。
枠メーカーも、もう10年ほど前から大きい枠をあまり作らなくなってきている。
しかし、当たり前のことだが、顔の大きさは、流行に合わせて変えるということはできない。
だから、当店は八方手を回して大きい枠を品揃えしていた。

依然として顔の大きなかたがたが当店におこしくださるのであるが、
しかし、だんだんに、お望みの形に合う大きい枠が少なくなってきたのである。

それはどういうことかというと、
昨今では、メガネの枠の主流は、単に横幅が従来よりも狭めであるだけでなく、
縦幅も狭いものが好まれるのであるが、いまどきの男性(うんと年輩のかたは別として)に好まれる、
大きめの顔の人に合う大きめの枠で、しかも縦幅が狭い、というものが非常に少ないのである。

そういう要望は聞きませんので、と

それで、当店に出入りされる卸屋さんやメーカーさんに、
そういう「天地の浅い大きい枠」を作ってくださいませんか、としょっちゅうお願いするのだが、
なかなか聞き入れてもらえない。

「そういう要望はあまり聞きませんので……」
「いまはとにかく、小さめの枠しか売れませんので……」
とか言われてしまう。

そもそも、問屋のセールスさんで
「小売店の要望をメーカーに伝えて、よりニーズやウオンツに合ったものをメーカーに作らせるようにしよう」
などという殊勝なことを思っているセールス氏は、いたとしてもごくまれな存在である。

ほとんどのセールスさんは「いかに売り上げノルマを達成するか」ということで頭が一杯なのであり、
ヘタに上司に「小売店からの要望」なんかを言うと「くだらんことを言ってないで、もっと売れよ」と言われるのが関の山である。

だから、私から「こういう枠を作ってほしい」と言われても、
それは右の耳から入ってすぐに左の耳から抜けるか、
あるいは、頭の中に留まっていたとしても、そのうちに消え去ってしまうかの、どちらかなのである。

そして、万一、どういう拍子か、私の要望がメーカーの耳に入ったとしても、
メーカーでは「そんな枠、まだどこも作っていない…… 需要が少ないから作らないのだろう。
ということは当社が作ってもリスクが非常に大きい、
売れるかどうかわからないものだ。じゃあ、やめとこ」となってしまう。

どの業種のメーカーでもそうだが、よほど余裕のある会社でない限り、
あるいは自分自身の思い入れのあるものでない限り、
他人の要望を聞いてリスクがある(と思われる)商品を作ろうなんて思わないものだ。

ところが、ある商品がヒットしたら、その二番煎じ的なものは喜び勇んで作る。
それは、ほとんど例外がないと言える。

本当に独創性があって、しかも優れていて市場にも受け入れられる商品……
なんてのは、めったに出てこないのは、そのせいである。

しかし、冷静に考えてみたら、わかりそうなものだが、
大きくてしかも天地が浅いメガネがないのは、絶対におかしいのである。

枠メーカーのアンテナの感度が

以前からある中年向きの枠、すなわち玉型の天地が40mm以上ある枠なら、
顔幅の広い人向けに、いまでも60mm、62mm、64mm、といろいろあるのに、
天地の浅い、例えば30mm前後の枠の場合には、普通は玉型サイズは52mmくらいまでしかなく、
たまにあっても54mmどまり、56mmから上は皆無というのが実情である。

これはもう、枠メーカーやデザイナーが現実を知らないだけ、アンテナの感度が鈍っているのだとしか言いようがない。
とにかく、どこのメーカーも「横幅が広くて天地が浅い枠」を作ってくれなかった。

以前から、チタンで60〜62くらいでややスマート(天地が40mm前後)の大きい枠を出しており、
いま、ウスカル枠もけっこう種類を多く出しているT社の人にも「大きくて浅い」枠を縷々説明して提案したのだが、
それでも一向に商品化される気配がない。

いまや、若い人だけでなく、老眼が始まる年代の人でも、
天地の深いのは格好が悪いからということで、天地が30mmも無いようなのを掛けたがっているというのに……。

そして、そういう人たちの中には、54mmでも小さすぎてとうていダメという顔幅の人たちが
少なからず存在するのを、メーカーの人たちは、知らないのか?!
本当に「歯がみする思い」とはこのことだ。

そこでまず当店ではセル枠で、1本づつバラで別作で大きくて天地が浅い枠を、いくつか、作ってみた。
セル枠なら、メタル枠とは違って、そういう1本製作も引き受けてくれる工場があるのだ。

それを当店のホームページでお知らせしたこともあり、
けっこうお買いあげいただき、次の補充まで品薄の状態になったりする。

それで私は「この調子なら、
いまメーカーが作りたがらない大きい枠を何百本という単位で量産しても、
絶対に大丈夫だ。他店でも売ってもらえば1年くらいで完売するだろう」
と確信を持つようになった。

それで、知り合いのメガネ店の有志を募って、
平成18年の夏から大きいメガネ研究会のオリジナル枠の企画と製品化をスタートし、
10月に会員相互のML(パソコン通信)を開始して、情報交換を始め、
19年2月に「大きいメガネ研究会」のホームページをアップして、それをもって会の正式発足としたのである。

私の予言

おわりに私は予言をしておく。
今後2〜3年のうちに、いろんなメーカーから天地幅が30mm前後で、
しかも玉型サイズが56mm以上の「大きくて浅い」枠が、いろいろ出てくるだろう。

あたかも、私が提唱して以来、たかだか1〜2年くらいのうちに、
いろんなメーカーから強度近視を意識した「ウスカル枠」が商品化されたように。

そして、ここで特に強調しておきたい。
玉型サイズが58mm以上あって、天地が30mm未満という矯正枠は、
大きいメガネ研究会が商品化するまでは、量産品では世界中のどこにもなかったはずであるということも。

もしもそういう枠をご存じのかたがおられたら、ぜひ教えていただきたい。
その枠こそ、広浅枠の隠れた元祖なのであるから。

(ただし、58mm以上のナイロールを天地を浅くして作ったとか、
ツーポで広くて浅いのを作ったとか、そういメガネ店での融通は、この場合、含まないでほしい。
私はあくまでも、メーカーにおける商品化を問題にしているのであるから。
また、カタログで量産品のように示してあっても、実は注文生産、というのも、私が言った「量産品」
には含まない)

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