パソコン用の(ルーペ)メガネ
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パソコン用の(ルーペ)メガネ
岡本隆博

度数の違いによる
見えかた感じかたの微妙な差



ハズキルーペ5の1.3Dの方は、
その度数からして、パソコン作業を想定したものであろう。

パンフには下記のように書いてある。
《PCが快適 
ブルーライト対応ルーペは、
焦点距離が50cm〜70cmと長くなり、
パソコンを見る時楽に見えます》

そしてその下に小さい文字で
《焦点距離は個人差があります》としてある。

そこに載っているイラストでは、20〜30代くらいの
女性が、自分のメガネを掛けた上からハズキを掛けている。
いわゆる重ね掛けである。
こういう場合、この元のメガネは、
近視低矯正の場合が多い。
そうすると、明視域は、50〜70cmよりも
ずっと短くなってしまう。

たとえば、左右ともに、完全矯正値が-4.00Dの
ところを-3.25に低矯正してある、
すなわち0.75D分低矯正にしたメガネ
(それでも遠見の矯正視力は1.0くらいは出るものだ)に
1.3Dのハズキを重ねればどうなるのか。
調節力が仮に2Dとすると、
明視域は眼前50cmくらいから、
眼前33cmくらいとなる。
これは、デスクトップパソコンを60cmとか、
それ以上の距離で見る人にとっては、
やや短すぎる距離である。

まあ、明視域には個人差がある旨が書いてあるのだから、
ユーザーはそれを承知で買えばよい、
といってしまえば、その通りなのだが……。

では、明視域が、その人のパソコン画面までの
視距離をカバーしていれば、
誰でもが、ハズキ5の1.3Dで、
快適にパソコン作業ができるのだろうか。

否、と私は言いたい。
すなわち、人のよっては、こでは強すぎて
気持ちよく使うことは無理、ということになる
おそれがあるということである。

その理由を述べよう。

我々は、数年前から「パソコンメガネ研究会」
http://usukal.biz/pc/
というのを立ち上げて、
パソコン作業用のメガネを多くの人に
調製販売してきた実績があり、
パソコン作業用のメガネ
(メガネ型式のルーペ、も同じこと)は、
意外に難しいということを、
我々自身の経験でよくわかっているからである。

たとえば、ひとつの例を挙げてみよう。

41歳 男性

主訴:遠くを見ていても眼が疲れるということはないが、
パソコンの画面を見ていると、少し時間がたつと、
眼の疲れを感じて、涙が出てくることがある。
目薬をさしても、あまり効果が無い。
メガネでなんとかなるのだろうか。
(これまでメガネの使用経験はなし)


それでまず、屈折検査をする。
すなわち、5mの距離で、
両眼それぞれに完全矯正値を求めるのである。
この場合、眼科などでやっている単眼検査よりも、
日常の融像視の状態で測定する、
両眼開放屈折検査の方が、
より正確で現実的な度数が出てくる。

両眼調節緩解テストの結果(5m完全矯正値)
RV=(1.5×S+0.25 C-1.00 Ax65)
LV=(1.5×S+-0.00 C-0.75 Ax105)
                  眼位は正常

それから、
この人が普段使っておられるパソコン画面の距離
(これが人さまざまで、40cmくらいから
90cmくらいまであるが、
50〜70cmくらいが多い)
に我々の独特の近見視力表を置いて、
それを見るための最適度数を求める。

そうすると、少なくとも理論的には(←眼の調節作用からして)
これがベスト、という度数がひとつ得られる。

R=S+1.50 C-1.00 Ax65
L=S+1.25 C-0.75 Ax105

これが、その視距離に最適の度数だ
という答えを得た。

しかし、これだけの検査で、すぐにこのとおりの
メガネを作ると決めるのではない。

この人はメガネを掛けた経験がない。
だからいきなりこの度数の乱視に適応する
(なじむ)かどうかは、わからない。

しかし、調節力の問題だけではなく、
乱視を持った眼で裸眼で一生懸命にパソコンの画面
を見ているから疲れが増えている、
ということも考えられる。

それで、まずは乱視の度数を落とさずに
この度数で10分ほど、
実際にパソコン画面を見ていただく。
すると、5分もたたないうちに
「はっきりと見えますが、なんか、
きつい感じがします」とのこと。

そこで思い切って乱視を2段階減らして、
それにあわせて遠視も減らしてみる。
そして乱視軸は5度まわす。
(乱視度数を減らしたときには、
5度まわしても乱視の矯正効果は変わらなくて、
空間視の違和感の減殺というメリットが生じる)

R=S+1.25 C-0.50 Ax70
L=S+1.00 C-0.25 Ax100

これでしばらく見てもらうと、「まだなんだか強い感じ」
とのこと。
それで次には

R=S+1.00 C-0.25 Ax75
L=S+0.75 

として、またパソコンを見てもらった。
そして10分ほどして「どうですか」と声を掛けてみると、
「まあ、なんとかいけそうです」とのこと。
(OCD(光学中心間距離)は、遠見PDよりも
6mm減らしている)
それで、この度数で処方した。

できあがりメガネをお渡しして、
3日ほどしてから、また、ご来店。
しばらくはよいのですが、
1時間以上このメガネをかけていると、
ちょっとなんか、きついような感じが……」
とのこと。

そうなると、もう、老眼の度数を下げるしかなさそうだ。
R=S+0.75 C-0.25 Ax75
L=S+0.50 

店で1時間も装用テストができないので、
どうしようかと迷っていると、
「この度数でしばらく見させてください」とおっしゃり、
ご持参のノートパソコンを見ておられた。
そして、10分ほどして、「これなら、大丈夫だと思います。
これでいいですワ」とのこと。
それで、レンズの入れ替えサービスをした。

……と、まあ、こんなケースもあるわけです。

ですから私は、こういう人に、既製品である
「左右とも+1.3DでOCDが48のハズキ」で、
ホントに大丈夫かな?
と思ってしまうのです。
左右ともに+1.3Dだと度数が強すぎて
「はっきり見えるけれど、なんだか疲れる」
などという訴えを聞くことになってしまうのでは?……
などという心配をしてしまいます。

そして、ハズキの1.3Dだと、
左右で約2△のベイスインが入るけれど、
これだけのプリズムが誰にでも
なじむものかな?とも思います。

まあ、普通のメガネ屋であれば、眼位が普通であれば、
メガネが初めて人にはめったに
そんなプリズムは入れませんネ。

そして、眼科やメガネ屋で眼鏡処方のときに
眼位(斜位)の検査をしない検査員
(実情はそういう人が大半)
であれば、なおのこと、近用眼鏡に
ベイスインプリズムを入れたり、
すなわち、プラスレンズのOCDを
うんと狭く入れたりはしません。

もし、ハズキ5の+1.3でPCを見て、なんだかおかしい
という訴えを眼科に持っていったとしましょうか。
眼科の人は、ハズキ5の+1.3の
度数とOCDをレンズメーターで調べて
驚きます。
「うわっ、な、なんだ、このPD(OCD)は!?
48じゃないか!?
あんた、こんなメガネを掛けていると
眼がおかしくなるよ」
と言いそうです。

ただし誤解がないように言っておきますが、
+1.3Dのハズキ5、あるいはユーザーが適当に選んだ
度数の既製老眼鏡でPC作業をして、
眼の疲れが減って、満足している人も、
当然おられるでしょう。
そういう人はいない、などということを
私は主張しているわけではありません。



ブルーライトカットについて


ハズキ5の1.3Dの方に採用されていて、
いま、メガネ(業界)で一種のブームのようになっており、
メガネ店や雑貨店はもとより、100円ショップなどでも
販売されているいるブルーライトカットのレンズ……。
これについては、
我々パソコンメガネ研究会の会員は
皆が特に積極的に推奨して販売している、というわけではない。

ブルーライトカットのレンズで
パソコンなどの液晶画面の青い文字を見ると、
たしかに、やや鮮明に見えるようだ。
しかし、では液晶画面から出るブルーライトが
人間の目にどれだけ悪いのかというと、
簡単にいえば、「悪いのではないか」という推論があるだけで、
医学的生理学的に確実な立証データはないようなのである。
(もしあったら、ぜひ教えてほしい)

業界誌『THE EYES』(興隆出版社)2014.5に、

最近、マウスの実験で、ブルーライトを半分に
カットするレンズが、網膜の疾患をもたらすのを
抑制する効果があった、という研究結果が発表された、

という記事があった。

しかし、その場合の光の強さはどうなのか
(人間がパソコン作業で受けるブルーライトカットの
強さと同様なのか)とか、UVカットのみのレンズと
UVカット+ブルーライトカットのレンズとでは、
結果にどの程度の差があったのかという数値は載っていなくて、
ただ「後者の方が網膜疾患を抑えるのに『有意に』働いた」
ということしか報じられていない。

そして、マウスにもたらした良い効果が
人間にも同様にもたらすとは言い切れない、
ということは、皆様もご承知であろう。

だからして、その研究をした
慶応義塾大学医学部眼科学教室講師の小沢洋子医学博士は、
その記事において、次のように述べている。 
 
(引用はじめ)
過剰な光刺激に対するLEDモニターが備わったPCを
連続的に使用する人々にとってブルーライトの遮断が
網膜機能の保護効果のひとつになりうる可能性を秘めています。
(引用おわり)


ここで我々が留意すべきことは、次の2点である。

1)いわゆるブルーライトカットのレンズは、
ブルーライト(波長が380〜495nm)を
完全にカット、すなわち「遮断」するものではなく、
30〜50%程度減らすだけである。

2)(ブルーライトカットのレンズは)
人間の網膜機能を保護することができる、
という結論ではなく、
あくまでも「可能性を秘めている」
に過ぎないと小沢氏は述べているのだ。


薬剤の開発などの目的で行われる
医学的な実験において、マウスの実験では成立したが、
人間にはその実験結果は通用しなかった、
なんてことは山ほどある……というか、
むしろマウスでの結果が人間にも当てはまることの
方がずっと少ないのが実情なのである。
だから医系のプロの研究者は、
マウスでの実験結果がどうこうと聞いたら
「そうですか。では人間ではどうなんでしょう?
まあ、ぬか喜びになってはいけないので、
あまり期待しないでおきます」などと思うだけである。

もちろん、小沢講師もそのヘンのことは百も承知である。
だから、「可能性を秘めて」と言ったわけである。
それは言い換えると、
「人間の場合には、どうなのかは、まだわかりません」
ということであるが、そう言ってしまうと、
話の腰が折れてしまうから、そうは言わないのである。

ただし、誤解がないように言っておくが、
私は「人間ではマウスとは違って
ブルーライトカットのレンズは
網膜疾患の予防や進行防止にまったく効果が無い」
などということを何の根拠も無しに
主張しているのではない。

人間の網膜疾患に効果があるのかないのかは、
そんなことはまだ誰も突き止めていないのだから。

ただまあ、私の素朴な感想としては、
ブルーライトがそんなに眼に悪いのなら、
青空や青い海などはなるべく
見ないほうがいいのですかネ?
という冗談のひとつも言いたいなァ。(^^)



眼精疲労に効果アリ?


それと、その記事には次のようなことも書かれている。
(  )内は引用者による補筆である。

(引用はじめ)
また同社(JINS)は、眼科専門医との共同実験により、
VDT症候群に対する眼精疲労改善効果を実証し、
2012年7月には「医師の確認済商品の証」
である「アスクドクターズマーク」も取得している。
(引用おわり)


この「アスクドクターズマーク」というのは、
JINSPCの他にもいくつかの
健康関連商品に付与されているようなのだが
https://www.askdoctors.jp/labs/product
(2014.6.14現在)
それを認証し付与している団体(あるいは、個人?)である
アスクドクターズ総研というのが
どういうものであるかがよくわからないのである。

これがたとえば公益社団法人であるのなら、
なかなかのものなのだが、そういうものではなさそうだし、
ネットでいろんなサイトをたぐっていくと、
どうやら「エムスリー株式会社」という
営利企業が作った任意団体(あるいは、
その企業の一部門?)であるらしい。

それはともかくとして、
JINSが眼科専門医と共同して実験し、
眼精疲労改善効果を実証した、
と記事にはあるが、この記述は、
この出版社の記者(編集者)が
JINSからもらった資料のまま
書いているだけのことであり、
記者自身がいわゆる裏取りをしたのではないと思う。

その実験について私は以前に、
その関係者に対して公開質問をして、
その「実験」の厳正さに関して
糾したのだが、いまだに回答はないままである。

http://www.ggm.jp/gkkk/1308191.html
http://www.ggm.jp/gkkk/1308191.html

そしてエムスリー(株)という
名前がここにも出てきている。
この会社は、このときJINSと一緒に
「研究」をした会社であるが、
どうやら、アスクドクターズマークを
JINSに付与した「アスクドクターズ総研」
と関係が深そうな「エムスリー(株)」であるらしい。

ふうん、そういうことだったのか……。

なお、パソコン作業に使うメガネのレンズに、
ブルーライトカット機能をつけるかどうか、
すなわち、薄いブラウンのレンズにするかどうか、
ということについては、私自身は
その見本でパソコン画面などを見てもらいながら、
お客様に対して次のようなアドバイスをしている。

 ・ブルーライトカットのレンズが
PC作業のときの眼精疲労を和らげるという
エビデンス(確かな研究による立証)は、
まだないようです。

 ・パソコン画面のほかに手元の書類なども
ご覧になるのであれば、ブルーライトカットの
レンズでは、書類が少し暗くなりますので、
その点において問題があると思われれば、
レンズは無色(UVカットつき)でよいと思います。

 ・パソコン画面の画像などの色調を
そのままに見たいのであれば、
ブルーライトカットのレンズでは、
全体の色調が茶色っぽくなるので、
無色の方がよいでしょう。

 ・パソコン画面の中の青色文字が
他の色の文字よりも少しにじんで見え、
ブルーライトカットのレンズを通してみると、
それが解消するから良い、とお感じになれば、
ブルーライトカットのレンズになさるのも
よいと思います。

 ・手元の書類などをあまり見ないで
パソコンの画面だけを見るのであれば、
ブルーライトカットのレンズによる
視界全体の明かるさの低下(10〜20%程度)は、
さほど問題にならないと思いますので、
眼精疲労を減らす効果がないとは
言い切れません。
 PC作業のときの眼精疲労を減らすには、
度数が合ったメガネが一番効果的なのですが、
いま現実にPC作業で眼精疲労を感じて
おられるのであれば、そういう度数をつけた上に
ブルーライトカットも取り入れたメガネを
試してみられてもよいと思います。



PCを見るのに、裸眼で見て疲れるのであれば、
大きく分けて下記の3つの方法がありえる。

(1)度なしのブルーライトカット
   のレンズで見る。

(2)度つきで、無色(UVカットつき)
   のレンズで見る。

(3)度つきで、UVカットと
   ブルーライトカットつきのレンズで見る。


このうちで眼精疲労を減らすのに一番効果が大きいのは
(2)か(3)であるが、(これまでの私の眼鏡処方経験からして)
では、(2)と(3)ではどちらが効果が大きいか、というのは
人によると思う。

そして、ではパソコン用メガネの度数は
どういう度数にすればよいのか、といえば、
既製品で用意されているたった一つの度数、
も必ずしも悪くは無いだろうし、
既製老眼鏡の中から適当に選ぶ、
というのも、悪いとは言わないが、
きっちりとした検査をして、個人対応の度数を
つけるのが、成功率が一番高いと私は思う。
(根拠は、これまでの私の処方調製経験)

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