ハズキ以前の双眼ルーペ
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ハズキ以前の双眼ルーペ


話の始まる前に、
ルーペと老眼鏡の違いについて、
私の考えを述べておきます。



まず、結論を言いますと、

その両者については、
ある場合には明確に違いを説明できますが、
ある場合にはその違いはなくて、
一部の双眼ルーペや一部の老眼鏡では、
まったく同じものが使い方によって
ルーペにもなり老眼鏡にもなる、
ということがあるのです。




それはどういうことかということは、
のちほどハズキルーペの解説のところで説明します。




私は、
我が国における双眼ルーペの歴史は、
「ハズキルーペ以前」と
「ハズキルーペ以後」に分けられると思っています。


その理由は、
ハズキルーペが日本国中津々浦々に
それまでの双眼ルーペ類とは
比較にならないくらいの爆発的な普及を示し、
いまでは「ハズキルーペ」は、
双眼ルーペ、あるいは、
メガネ型ルーペの代名詞になっている、
と言えそうな状況にあるからです。


そこで、この項では
ハズキルーペ以前の双眼ルーペについて
いくつか紹介して説明をします。




(1)双眼ヘッドルーペ


右に示すようなヘッドバンド型ルーペは、
かなり以前からありました。

これは、レンズと眼の間隔
(以後、これを、Vertex Distance
(頂点間距離)のかしら文字をとって「VD」と書きます)

が比較的長いことと、
レンズが小さめなので、
強度の凸レンズを使えるので拡大率も高く、
細かいものでも大きく見える
という利点がある反面、
視野はかなり狭くなってしまいます。


それでもこれがよいという職業や
趣味の人には
根強い需要を持っているものです。

ちなみに、
この写真の製品では、
レンズは、
1.8倍、
2.3倍、
2.7倍、
3.5倍の
4種が用意されていて、
簡単に入れ替えができます。

それらのレンズのD(ディオプトリー)値や、
左右のレンズの光学中心の間隔
(これを以後、Optical Center Distanceの
頭文字をとってOCDと略します)

はカタログ(名古屋眼鏡発行)の商品説明には
示されていませんが、

この倍率表示の数値から、
一般的なルーペの倍率の計算式である、

     倍率=(250mm÷レンズの焦点距離)+1

から逆算しますと、
順に、
3.25D,5.25D,6.75D,14Dであろうと推測できます。

(写真は名古屋眼鏡(株)のパンフからの転載です)



そして、
OCDは写真から
30mm前後であろうと推察できます。



仮にPD(瞳孔間距離)が66mmの眼で、
眼前6cmにあるレンズを通して
眼前15cmのものを見るとするならば、
レンズ面における
左右の視線の間隔からするそのOCDの幅は、
妥当であろうと思われます。


すなわち、その場合、
左右の目には多少のベイスインプリズムが
付加されるのですが、
それは、近くを見る際の眼の輻輳
(視線を互いに内側に向けること)
を節約できる作用効果をもたらしますので、
左右の視線がどちらもレンズの光学中心を通るよりも
かえって楽に見ることができるわけです。


それはともかくとして、このルーペは、
上記の写真のものでは、
レンズサイズが、縦20mm,横35mmくらいしかなく、
その視野の狭さからして、
普通の老眼の人の読書や、
パソコン作業などには不向きだと言えます。




(2)広視野型のヘッドルーペ


これも以前からあったものですが、
今述べたヘッドルーペよりも、
レンズ視野が広めなのが特長です。


右に示すものでは、
レンズ片方のサイズが、
縦も横も47mmくらいですが、
横幅をこれ以上広くしても、
片方の目で見る鼻側視野が広がるわけはなく、
それ以上両眼視できる視野は広がらないので、
レンズの横幅としては実際のところ、
これくらいで十分だと言えそうです。


この写真のものでは
3種類のレンズが用意されており、
見たい拡大率により、
取り替えるようになっています。

その3種類のレンズの度数は、
2.5D(1.625倍)、
3.75D(1.93倍)、
5.00D(22.5倍)
となっています。

レンズのOCDはどれも40mmになっていますが、
視距離とOCDとの関係を考えると、
2.5Dのものはこれでもよいのですが、
3.75Dや5.00Dのものでは、
そのレンズでの視距離を考えると、
もっとOCDを短くしないと、
両眼視するときに、
ベイスインプリズムによる輻輳力の補いが
働かなくなってしまいます。


すなわち、
度数の強いものほど接近して見るのですから、
強度のものほどOCDを短く作って

『接近して見る場合ほど
ベイスインプリズムが強くかかって
輻輳の補助が多くなって見やすい』

というようにしたほうがよいと思います。


使用者の使い方によっては、
これで十分満足している人もいるのでしょうが、
あとで述べるハズキルーペに比べると、
外見が「いかにも」という点で
敬遠される人もいるかもしれませんし、
また、脱着の便利さの点でも、
ハズキルーペなどのメガネ型ルーペには劣るようです。


それで、
これをパソコン作業や読書などに、
老眼鏡代わりに使えるかといいますと、
人によっては使えなくもないけれど、
視距離や視野の狭さの点で、
あまり使いやすいとは言えないでしょう。


なお、このタイプのものには、
レンズの跳ね上げができて中距離や遠距離を見たい時に
その都度ルーペ全体を頭から外さなくても
レンズ部分を上に回転させて
中距離や遠距離を見ることができるようにしたものや、
照明付きのものもあります。




(3)メガネ型の拡大ルーペ


これは、右の写真のように
メガネのような二本の腕を持っていて、
それを耳にかけて使う、
メガネ型の双眼ルーペです。

眼とレンズの距離がかなり離れていることや、
3種類のレンズの度数が
強めにできていることにより、
かなり拡大して大きく見えますが、
視野はかなり狭いので、
老眼鏡のように本を見たり
パソコンを見たりするのに使うには
適していません。

仕事や趣味で、
見る範囲は狭くても、
特に細かいものを大きく拡大して見たい人に適した
メガネ型の(あるいは、
自分のメガネを利用した)双眼ルーペです。

ちなみに、
入れ替えができるレンズの倍率は、
2倍、25倍、3倍、とのことですので、
Dにすると、4D、6D、8Dとなっていて、
OCDは20mm台まで短くしてあるようです。


なお、この種のものには、右の写真で示すような、
メガネにアタッチメントとしてつけるものもあります。

(写真はどちらも名古屋眼鏡(株)のパンフからの転載です。





(4)ペアルーペ(ひとつ前のハズキルーペ)


現在(2011.12月)、
マスコミでも盛んに宣伝されている
ハズキルーペの前身がこれですが、
現在(2011.12月)も継続して通販で販売されています。

発売元はいまのハズキルーペと同じところで、
基本的には今のハズキルーペと同じものですが、
多少の違いがあります。
(以後、これを「ペアルーペ」と呼び、
現在のハズキルーペを「ハズキ」または
「ハズキルーペ」と呼ぶことにします)



まず、
レンズについて見てみますと、
度数は+2.5Dでハズキと同じ、
OCDも48mmで同じです。


ただし、
レンズの大きさが違っていて、
ハズキは片方で横60mm縦43mmなのに対して、
このペアルーペでは横53mm縦42mmで、
ハズキよりも小さめです。


そして、
ハズキの左右のレンズの光軸は
ほとんど輻輳していないのですが、
ぺアルーペの左右のレンズの光軸の輻輳は強く、
いわば、
ペアルーペでは見てくれよりも機能本位に作ってある、
ということになるでしょう。


なお、
このルーペの左右のOCDは48mmですが、
もし設計者がこれで近くを見るときに
視線がレンズのほぼ光学中心付近を通るということを意図して
設計されたのであれば、
視距離は20cm弱くらいを想定していることになります。


しかし、
このルーペの度数が+2.50Dであり、
眼の調節力が弱まっている人が
使用することが多そうですので、
眼の調節作用でものをより近づけてみるということが
難しい場合が多いでしょうから、
実際には30〜35cm くらいの視距離で
使われることが多いと推定されます。


そのくらいの距離でものを見るとしますと、
OCDが48ですと左右で
3△前後のベイスインプリズムが目に負荷され、
その分の輻輳量の節約が可能となるので、
ほとんどの人には、より楽に
同じ近距離のものを見ることが
可能となるわけです。


設計者はおそらく
それも織り込み済みで、
この48mmというOCDにしたのではないかと
私は推察します。

ただ、メガネ屋の経験から言えば、
近見用のメガネにベイスインプリズムを負荷しますと、
その量にもよりますが、
一部には違和感を感じる人もいます。

ですので、
私たち眼鏡技術者が近見専用眼鏡に
ベイスインプリズムを入れる場合には、
ある程度の装用テストを行なって、
それがあるほうがよいという人に
入れるようにしています。


次に、フレームですが、
腕のスタイルは普通のメガネ的なもので
斬新さはないのですが、
レンズ部分を目からかなり離して使えるように、
腕をかなり長くしてあります。

しかも、
鼻あてがこれまた非常に機能本位で、
このペアルーペを、
普通のメガネでの12mm前後のVD(レンズと眼の間隔)
では使うことはほとんど無理で、
いやでも長いVDで使うようにしてあります。

ハズキではレンズをせいいっぱい前にやっても、
レンズとの距離は4cmくらいにしかなりませんが、
このペアルーペではそれが6cmくらいまで伸びます。

ゆえに、
これもハズキもレンズの度数は同じですが、
視感拡大率はペアルーペのほうが
ハズキよりも大きくなります。


ただ、VDが長くなることと、
レンズの大きさが
もともとハズキよりもペアルーペのほうが
小さめなこともあって、
両眼で融像視できる広さは、
ハズキよりも狭いです。

このペアルーペは、
どちらかといえば機能本位の製品であり、
「老眼鏡とは違ってルーペなのだから、
できるだけものを大きく見てもらいたい」
という設計者の気持ちが如実に伝わってくる感じがします。


いわばこれは、
大当たりしたハズキルーペの前身の
「ごくまじめなプレ・ハズキルーペ」
だと言えるかもしれません。

重さは約33gで、
昨今の普通のメガネよりも重いです。

しかし、このペアルーペは、
気軽に老眼鏡のように使えて、
さきほど紹介した倍率の高い双眼ルーペのように
視野がえらい狭いということはなく、
しかも手元のものが大きく見えるので助かる……
ということで人気を博し、
これ以前の他社のメガネ式の双眼ルーペよりも
はるかによく売れたそうです。

実は、このメガネ型のペアルーペの前に、
同じメーカーが手持ちのペアルーペ
(レンズ部分の構成はほとんど同じ)
を出しており、
それがこのメガネ型のペアルーペに発展したわけです。


メガネ型であれば、
まず両手が空くから便利ですし、
手持ちとは違って左右の水平の傾きもあまり出ないので、
左右の眼に
上下プリズム誤差を
負荷させるおそれがないので有利です。




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ハズキルーペの特長
ハズキルーペの特長
2011年の夏に、まさに画期的な双眼ルーペ、
ハズキルーペが出ました。
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