メガネレンズの選び方
岡本隆博
強度近視のメガネを、
できるだけ薄くて軽いものとなるように作る場合に、
屈折率の高いものの方が
同じ度数でも薄くなって具合がよいのですが、
レンズの材質としては、ガラスを使うのとプラスチックを使うのとでは、
どちらがよいのでしょうか。
まず、マイナス12D前後以上の相当な強さになると、
プラスチックでは薄さに限界があり、
プラスチックレンズの種類によっては、
12Dを越えると製作していないものもあります。
そうなると自然にガラスレンズで作ることになりますが、
それほどの強さでもない場合には、
一応ガラスでもプラスチックでも、どちらでもできます。
そして、それぞれに長短があって、
一概にどちらがよいとは言えないのですが、
その長短を下記に示します。
プラスチック ガラス 重さ 軽い プラスチックよりも重くなる 厚さ 薄くなるものがある プラスチックよりも更に薄くなる 傷つきやすさ 傷つきやすいものが多い 傷つきにくい 割れやすさ 割れにくい プラスチックよりは割れやすい 価格 いろいろ いろいろ
1.割れにくさを重視
球技などのスポーツに使うとかいう理由で、
できるだけ割れにくいものがよいというご要望があれば、
プラスチックの方がいいでしょう。
2.薄さを重視
とにかく、できるだけ薄いものがよい、
渦巻きが目立つのはイヤだ、
というかたは、ガラスの方がいいです。
ガラスだと屈折率が最高1.9まであります。
プラスチックなら1.74までしかありません
(どちらも非球面設計)
ので、薄さの点ではガラスの方が有利です。
たとえば、マイナス9Dの強度近視
(裸眼視力は0.02〜0.03程度)
のレンズを、
PD64で、42□22
(玉型横幅が42mmで鼻幅が22mmのウスカル枠)
のサイズの楕円形の枠に入れた場合の最大コバ厚は、
1.9のガラスだと約3.3mmですが、
1.74のプラスチックだと、約4.1mmとなります。
この「3.3mm」と「4.2mm」という厚さの違いは、
実際のものを見てみると、数字だけで想像するよりもずっと差があります。
また、枠の大きさがあまり小さくない場合
(たとえば48〜50mm程度とか、それ以上ある場合)には、
この差はさらに拡大します。
3.軽さを重視
厚さよりも軽さを重視するというかたの場合には、
当然ながらプラスチックの方が有利なのですが、
その場合に、
プラスチックで屈折率が高くなればなるほど普通は比重が高くなり、
体積の減少に比例して重量が軽くなるわけではありません。
プラスチックで屈折率を上げたら、やや軽くなるかな、
という程度ですので、
薄さにはあまりこだわらないが、とにかく軽いものを、ということでしたら、
予算内で買えるプラスチックレンズにされたらよいわけです。
4.薄くて軽いもので、割安のものを
値段があまり高くなるのは困るが、
それでも、できるだけ薄くて軽いものがよい、というご要望が、
実際のところ、もっとも多いです。
私はそういうかたには、
まず、ガラスレンズを勧めています。
(ただしスポーツなどで安全性を重視する場合は別です)
たとえば、−6Dで、屈折率が1.8のガラスレンズ(球面設計)と、
1.74のプラスチックレンズを比べてみましょう。
40□26のウスカル枠に、PD66(左右とも33mm)で入れたとします。
すると最大コバ厚は、ガラスの方だと約2.7mm、
プラスチックでは約2.8mmとなり、ほとんど同じと言ってよいくらいです。
重さはもちろんガラスの方が重くなりますが、
この程度の枠の大きさだと、ガラスでもかなり軽くなり、
チタン枠であれば、ガラスのレンズを入れても20g以内ですむことが多く、
実際のところ、重さはほとんど気にならないものです。
それで、価格の点ではどうかというと、
当店のレンズ価格表では、1.8のガラス(球面設計)よりも
1.74のプラスチック非球面の方が5割ほど割高になっています。
ですから、枠とレンズを加えた価格においても、
この場合であれば、プラスチックで作る方が2〜3割ほど高くついいてしまいます。
5.度数がやや強いという程度で、価格重視なら
また、度数がやや強い程度の近視であれば、
ウスカル枠に、屈折率1.6のたいへん安いガラスレンズで作ると、
全体でもかなり安くてしかも、薄くて軽いメガネができます。
たとえば、42□26の枠に、
−4Dで、PD68で入れた場合、
屈折率が1.6のガラスレンズを使ったら、
最大コバ厚は2.8mmで、重さも20g未満でできあがり、
価格は、枠とレンズを含めて4万円前後かそれ以下ですみそうです。
(ただし、安全性を重視なさるかたにはガラスはお勧めできません)
* 事前に厚みを確認
強度近視のメガネを注文する場合には、
なるべく事前に、何種類かのレンズで作った場合の、最大コバ厚を尋ねて、
その試算結果を聞いてから判断されたらよいと思います。
なお、枠が十分小さければ、
ガラスでもプラスチックでもレンズの重さは心配いりません。
* 球面設計と非球面設計
それから、
レンズには非球面設計のレンズと球面設計のレンズがありますが、
概して言えば、その光学的な性能にあまり差はなく、
同じ屈折率のものなら非球面設計のものの方がやや薄くなる、
と理解しておかれたらよいと思います。
非球面設計の方が
レンズ周辺部で見た場合の像の歪みが少ないと言いますが、
実際にはさほどの差はないようです。
特に、ウスカル枠のような小さい枠に入れる場合には、
レンズ周辺部での収差による、ぼけや歪みは、ほとんど問題になりません。
また、A(外面非球面)とB(内面非球面や両面非球面)とを比べると、
Bの方が周辺部での視力低下が少ないとされていますが、
それも枠が小さいときには、さほどの差はないようです。
ただし、弓を射る人などで、
横目でものをはっきりと見たい人の場合には、
Bのレンズか、さもなくば球面設計のレンズになさる方が、
横目でものを見た場合の視力の低下が少ないのでよいでしょう。