メガネ・フィッティング調整研究会

メガネ・フィッティングの奥深き世界とは

プロの技術を評価しない人


本会代表 岡本隆博

プロの技術に対する評価、ということを端的に示す例が一件、いましがた、当店において、ありました。

さきほど、30代くらいの男性が少しゆがんだメガネを持って来店されたました。
「今朝、家でゆがめてしまった、直してほしい」、とのこと。
こういう場合、購入店へ持っていけない事情があるのだろうと推測し、このメガネを今まともに掛けられないのではお気の毒、と私は思ったので、「このメガネの購入店へ」と言って調整をお断りするのは適切ではないと判断しましたが、 念のために、「金属が弱っているかもしれないので 調整作業で、もし破損などが起こっても責任は取れません」
ということと、

「調整料金は500~1000円いただきます」ということを申し上げました。
そして、こういう事情なので調整料金は普通よりも安めに言いました。

そうしたら、料金を払うことに意外であるかのような様子が伺えましたので、私は

「これをお求めになったお店は遠いのですか」

といいますと「家からは近いんだけど」とのことです。

「なるほど・・・・、その店が開店する前に、こちらへご出勤なさったのですね」

「うん・・・・」

「その店であれば、おそらく調整作業は無料だと思います。ただ、調整により破損などが起こっても責任は取れません、ということは言われると思いますが」

そうしたらちょっと考えてから「ほんなら、その店へ持っていくわ」と言って、店を出て行かれました。

今日の夜までなら、メガネなしでも、なんとかなるのか、あるいは、別のめがね店へいらっしゃるかの、どちらかなのでしょうが、どちらにしても、このかたの場合、当店で調整をお受けにならない理由は、500~1000円の調整代金がいるかいらないか、 ということ以外にはありえません。

私は、プロの技術を評価できない人は、相手にはしたくないですから、この応対でよかったと思っています。

あとで、その人がメガネを買ったメガネ屋か、あるいは無料で調整をしてくれるメガネ屋で、

「梅田のメガネ屋へこれを持っていったら調整料金を1000円もらいます、なんて言うので、そこで調整してもらうのはやめたわ」

「へえ、人の足元を見てふっかける、悪いめがね屋ですねえ。そんなに難しい調整でもないですけどねえ」

なんていう会話があるかもしれません。(苦笑)

それで、なぜこの人が、調整が有料であることに不満を持ったのかと言いますと、

これまでに、いわば店のイメージアップのために、チラシに「他店さまのメガネのクリーニングや調整でも、お気軽にお持ちください。無料でさせていただきます」と書くめがね屋もあったし、そういう宣伝はしなくとも、 他店購入メガネの調整を持ち込まれた場合に「不親切な店」との烙印を押されたくないので、断らずに、いい加減なお茶濁しで無料で調整のまねごとをする(←悪いうわさ恐れて)メガネ屋が少なくない、というようなことも あるからでしょう。

ですから、この人を「調整は有料」ということに不満を感じさせたことについては、業界にも責任の一端があるのかもしれません。(この人自身の考え方の問題もないとは言い切れませんが)

たった今おいでになった50歳くらいの男性のかたは、少し前に当店で買われたメガネの調整でした。

2、3分くらいの調整が終わったあとで、「おいくらですか」とおっしゃいました。

もちろん無料でさせていただきましたが、

これはやはり、個人の性格(社会的常識)の問題が一番の理由かもしれませんネ。


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たとえば、救急病院は、急病でその病院へ来た人の診療を、なるべく拒否せずに受け入れますよね。(必ず受け入れるとは限りませんが)

それは当然、人道的なことからくるわけですが、その場合、診療のあとで、急病で気の毒だから診療は無料にしてあげる、なんてことは絶対にありません。

患者のほうも、もしも、その診療によって怪我や病状が好転しなかったとしても、自分にとってメリットがなかったのだから診療の費用を無料にして欲しい、お金を払うのはイヤだ、なんて思いません。

それは、結果がどうであれ、とにかくプロが自分の要請にしたがって、その知識や技術や設備や時間を使って業務をしてくれたことを評価するのが当然だからでしょう。

そういう「ものの道理」をわきまえず、

自分の要請にしたがって、あるメガネ屋がなしたフィッティング調整によって、満足できる状態になったのなら良いがそうならなかった場合にでも、その料金を払わないといけないというのは理屈に合わない。
そんな場合には調整料金は払いたくない、と思っておられるかたも、もしかしたらおいでかもしれません。

しかし、あなたは、ある医師の診療が自分の症状の改善に効果をもたらさなかったといって診療費用を払うのは理屈に合わないとは思わないでしょう。

弁護士に訴訟を頼んだとして、その訴訟に負けても弁護費用は払わないといけませんよね、

……と言うと、あなたは、もしかして、「しかし、医師や弁護士は国家資格を持っていて、その能力が公的に保証されている。メガネ屋はそうではない。だから下手なメガネ屋もいる。メガネのゆがみも満足に治せないような 下手なメガネ屋に何で調整料金を払わないといかんのか」とおっしゃりたいかもしれません。

下手なメガネ屋も少なくない、というのはたしかにそうです。
わが国には社団法人の認定した「眼鏡士」というのもいますが、実力のほどはさまざまです。特に、フィッティングの技術に卓越した人は少ないです。

ですので、それぞれの眼鏡技術者の個人的な能力レベルはあらかじめわかりませんし、実際のところ、調整してもらってどこまで改善するのかもわかりません。

ですので、実際のところ調整を依頼するほうには何がしかのリスクは避けられないのです。

しかし、調整がいるな、と思われるメガネに対してそのままにしておくのか、あるいは誰かに調整を依頼するのか依頼するとすれば、無料でしてくれそうな店で以来するのか有料ですよと言う店に依頼するのか、メガネ屋から料金のことを言わなければ、 料金がいるかどうかを確認してからにするか、あるいは、料金のことを言われなければ、無料だと解釈して、その人に依頼するのか、そのあたりは、そのメガネユーザーのまったく自由なのです。

そして調整依頼を受けたメガネ屋のほうも、その依頼を受けるのか受けないのか、受けるとすれば、事前にどういう条件を言うのか、何も言わないのか、それも、メガネ屋の自由なのです。

この辺は、医師と患者の関係とは、かなり違いますね。

しかし、公的資格のない技術に何かしてもらった場合にもっとも困るのは、たとえば、町で今はやりのマッサージを頼んだとしてその料金がわからずに始められてしまって、それがすんでから「8000円です」などと請求されることですよね。

しかし、そういうことは普通はありません。
彼らはほとんどが無資格ですから事後になってはじめて料金を言って請求するということはまずしません。
必ず、こういうマッサージなら、30分でいくら、1時間でいくら、 と料金を事前に示しています。
また、そうでなければ、お客さんは、公的資格を持たない彼らのマッサージを受ける気にはなれません。

ところが、国家資格を持った鍼灸師の場合には治療が終わってから料金を言ってくれることもあります。

そこが公的資格を持った人間と持たない人間の違いだといえるでしょう。

ですので、あるメガネ屋がその店で買ったメガネではないのにその調整を依頼された場合には、有料でするつもりであれば、必ず料金がかかるということを前もって言うはずですし、もしも、前もってそれを聞かされずに、 あとから調整料金を請求されたのであれば、それはお客さんが不満に思われるのももっともですし、そんな、「ことが終わってから初めて料金のことを言う」、なんてのは、公的資格がない技術者がすべきことではないと私は言いたいです。

それでもしも、常識がないメガネ屋から調整の前に料金のことを聞かされていなくてあとになってから料金を請求されたとしたら、

「有料だなんて聞いていなかった。払えないよ」とおっしゃって、払わないで店を出てしまってもいいし、その金額がまあ妥当かなと思われれば払ってもよいし、それはどちらでもよいと思います。

それで、私としては、同業者に対しては次のように申し上げたいです。

「公的資格のない我々メガネ屋は、調整作業をする場合に有料でするつもりであれば、必ず事前に、いくらくらいかかるかを言って承諾を得るべきである。
そして、リスクのことも言うべきである。
事前に料金のことを言わなかったら、それは無料でやりますということだと 解釈されてもしかたがないし、事前にリスクのことを言わないでとりかかったのであれば、もし破損などがあった場合には、自分が弁償します、ということだと解釈されてもしかたがないのですよ。」


ですから、もしも、あるメガネ屋が他店購入のメガネにたいして事前に料金のことも、破損リスクのことも言わないで調整にかかったのであれば、それは「無料でするかわりに、ホントに真剣にするわけではありません。
メガネが壊れない程度にさわるだけです。
さわりもしないで断ったら、不親切なメガネ屋だとおもわれそうだから、一応は断りはしないけど」

ということだと思っていただいたらよいと思います。

でも、ユーザーにとってそんな調整は、いわば時間の無駄でしょう。そんないい加減なメガネ屋に行ってしまったらうまく言いくるめられて新しいメガネを買わされてしまうのが関の山……、かもしれません。


腕ききの眼鏡技術者が他店購入のメガネに対して自分が持っている技術を最大限に発揮してできるだけ良い状態に戻そうとするのであれば、事前にリスクのことも料金のことも前もって言わない、ということは、私には到底考えられないのです。

ですので、そういうことからすると、

あなたが、メガネの調整で買った店へは持っていけない事情があって買ったところとは別のメガネ屋に依頼したとして、

それを受ける技術者の人の技量の高低や、あるいは、真剣にうまく治してくれそうかかどうか、ということは、「まえもって破損リスクのことや、料金のことを言うかどうか」ということで、ある程度わかるのでないかと 私は言いたいです。

真剣にきっちりとした調整をしたい意思が強ければ強いほど、腕が立つ人ほど、破損リスクや料金のことを言わないで調整をはじめるという可能性はゼロに近くなると私は思います。


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なお、この

「公的資格のない我々眼鏡技術者は、業務の中で専門技術を発揮するときには、事前に料金のことを言って承諾を得るべし。事前の承諾なしでの、事後の料金請求は無理であり不当である。

しかし、事前に、料金のことで承諾を得るのであれば、技術的作業のみで報酬を得ることは、公的資格がないわれわれでも、まったくさしつかえない」

という私の考え方は、フィッティング調整だけでなく検眼(眼鏡処方のための諸検査)についても当てはまることです。

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