重ね掛けについて・その1
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重ね掛けについて・その1
岡本 隆博


宝田氏は写真も重ね掛け


ハズキルーペは、重ね掛けを勧奨している。
それはいまのハズキルーペ以前の
ハズキペアルーペからの流れであるが、
ペアルーペでは、重ね掛けのときに具合が良いように、
ペアルーペの後ろに装用しているメガネの鼻あてパッドと
ペアルーペの鼻あてがバッティングしないように
作ってあった。

 → 参考 ハズキペアルーペ http://www.agport.co.jp/products/houseware/pairloupe.html

  * この宣伝写真においては、宝田明氏は、
    重ね掛けをしている。

また、Part1以後のハズキルーペでは、
鼻当ての位置や構造がペアルーペとは様変わりして、
ある程度眼に接近させての単独使用もできるし、
ハズキを眼からかなり(数センチ程度)離しての単独使用もできる、
というふうになっている。

ハズキのほかのメガネ型の双眼ルーペの場合も、
たいていは、単独使用もできるし
重ね掛けもできるようになっている。

この項では、ハズキなどのメガネ型式のルーペを
単独使用した場合と、重ね掛けをした場合の長短得失を
考えてみよう。

ハズキではいまのところ、その度数は、
最新のPart5で2.5Dと1.3Dのみであるが、
ほかのメガネ型ルーペでは、いろんな度数がある。
それで、話を複雑にしないために、一応ここでは、
メガネ型ルーペのトップブランドであり、
代表者としてのハズキ採用している
2.5Dと1.3Dに限定して考えてみることにする。




単独使用が有効な場合


重ね掛けを検討する前に、単独使用について考察する。
ハズキを単独使用する場合において、
各人の眼の屈折状態すなわち、
屈折異常があるのかないのか、
あるのなら、どの程度あるのか、
そして(ピント)調節力はどのくらいあるのか、
ということについては、まちまちである。

いろんな場合がありえるので、それぞれの場合に
ついて考えてみる。

1)その人はメガネを持っていない。

その人がメガネを持っていないし使ってもいない
というのであれば、その人の眼は正視か
それに近い状態であろうが、
人によっては、かなり正視からはずれた状態なのに
遠く用のメガネを持っていない、使用していない、
ということもままある。

そういう人が、ハズキの単独使用で、うまく目的を達する
ことができるかどうかは、一概に言えない。

しかし、メガネは使っていなくとも
コンタクトレンズで矯正している場合には、
おおむね正視の状態になっているであろう。
そういう人や、あるいは、ほぼ正視の人が、
ハズキを単独使用したならば、
少なくとも視距離においては、
2.5Dの方なら眼前30〜35cmくらいで、
1.3Dの方なら眼前50〜70cmくらいで
ものがハッキリ見えるという状態になる。

だから、一応は自分が見たい距離でものをハッキリ
大きく見るという目的は達せられそうである。

ただし、眼とレンズの距離を短くすればするほど
ベイスインプリズムが多く負荷されるので、
それによる違和感が人によっては起きる可能性があるし、
若い人で老眼鏡をかけたことがない人であれば、
目的の視距離でものが大きく見えるけれども、
しばらく見ているとなんだか気持ち悪くなってくる
という人がいても不思議ではない。

 参考 → こういうブログがある。
    http://dekodeko0613hime.blog.fc2.com/blog-entry-37.html(2014.7.20現在)

ハズキに限らず、メガネ式の双眼ルーペは、
単眼ルーペよりも眼光学的にもレンズ光学的にも
シンプルなものではないので、
実際に試しに手元のものをせめて5分ほどでも
見てみて、気持ちよく見続けることを確認してから
買うのが賢明だと思う。


2)正視に近い人で、近く用のメガネはあるが、
それによる見え方に不満があり、
ハズキなら自分が持っているメガネよりも
もっとハッキリと大きく見えると思って
ハズキを使ってみた人

この場合も、ハズキに満足できるかどうかは
一概に言えない。

それまでの老眼鏡にやや強めの乱視が入れてあったのなら、
乱視は入ってないハズキで見ると、やや鮮明さに欠ける
感じがするかもしれない。

それまで使っていた近用メガネが
ハズキよりも度数が弱かったのであれば
当然、ハズキの方が大きくてはっきり見えて
満足する可能性が高い。

しかし逆に、球面度数において、2.5のハズキの方が
元の老眼鏡よりも弱かったのであれば、
手元のものを見る距離が老眼鏡よりも遠くなるから
ものを見る大きさの点で不満を感じるだろう。

ただし、その場合は、自分の持っているメガネに
ハズキを重ね掛けするという方法もあるのだが、
それでうまくいくこともあろうし、
それだと物を見る距離が近すぎて具合が
よくないと感じることもあるかもしれない。

要するに、こういう場合も
やはり購入の前に試しに使ってみるのがよいわけである。


3)遠方用メガネは持っているが
近見用メガネは持っていない人

たとえば、-2〜4程度の近視系の人であれば、
たとえ老眼があっても、遠方用メガネを外せば
手元がぼやけずに見えるので、いわゆる老眼鏡は
なくても生活に困らない……。

そういう人がもしも、
ハズキなら手元がもっと大きく見えて具合がよいかも、
と思って、ハズキを買ったらどうだろう。
その結果は、その人の近視の程度や
ハズキの度数によって左右される。

@
たとえば、−3Dの近視の人がハズキを使う場合……
裸眼でハズキを使うとして、
2.5Dのハズキなら「視距離が近すぎてダメ」かもしれないし、
見たいものによっては、「期待どうり」となるかもしれない。
1.3Dのハズキなら逆に「これでもまだ見たい距離よりも
遠いし、期待したほど大きくは見えない」
と感じるかもしれない。

A
では、−1.5Dの近視の人ならどうか。
2.5Dでも1.3Dでも、どちらのハズキでも視距離によって
使い分けられてよいかもしれない。
そして、Aの人なら遠方用メガネにハズキの重ね掛けで、
手元を見るのも、うまくいきそうである。


4)遠方用メガネも近見用メガネも持っている人

@
たとえば、遠方用で-5.00、近見用で-2.50Dのメガネを
使っている人に、ハズキの単独使用の余地はあるだろうか?
この人は裸眼でなら手元をかなり接近して大きく見ることができる
のだから、そもそもハズキを使ってみたいと思うことは
ないだろうし、実際のところ、どちらのハズキでも、
単独使用のメリットはあまりなさそうである。

A
では、遠視系の人ならどうか。

たとえば、+1.25を遠方用として、+4.00を近見用に
使っている人ならどうか。
この人がたまたま、+2.50のハズキを誰かからもらったとして、
眼前70cmくらいのPC画面を見るのなら
そのハズキの単独使用が具合良く使えるかもしれないが、

しかし、そうでなく、PC用にということで
+1.3Dのハズキをもらったらどうか。
その場合だと、それ単独では度数的には
遠方用にしかならないが、
しかし、そこにはベイスインプリズムがかかっている
ので、遠方視においては開散要求となり眼精疲労を招く
恐れがある。
ただ、この人は自分の1.25Dの遠方用のメガネがあるのだから
そういうふうに1.3Dのハズキを使おうとはしないだろうが。

この場合は、遠方用との重ね掛けならPC画面を見るのに
使えそうだし、近見用との重ね掛けなら、
近見用メガネだけよりも、
さらにものを接近して大きく見ることができる。





このように、場合にわけて考えてみると、
ハズキの2.5Dか1.3Dかの、
少なくともどちらかの単独使用が役に立つ人は、
正視やコンタクト装用の人以外にも
いろんな屈折異常の眼において
確実に存在しそうである。

プリヴェAGのネットサイトの広告で、
ハズキルーペPart5について述べているものにおいては

http://www.agport.co.jp/hazuki/hazukiloupe.html

(引用はじめ)
視力がよい方、コンタクトレンズの方 
→ そのままかけてください。
(引用おわり)
としてある。

ところが、上記で考察したように、そういう人でない人でも、
ハズキの単独使用が有効である人もいるのだから、
単独使用について、それらの人だけを挙げておくのは
もったいないような気もする。

しかし、実際のところ、(遠見)視力の良い人でも、
皆が皆ハズキで満足できるとも限らないし、
それ以外のどういう眼の状態の人がハズキの単独使用が
有効であったり快適に使えたりするのかということも、
実際に使ってみないと最終的なことはわからないのだから、

広告宣伝においては、
「購入の前に必ず試し見をしてください」と
書いておくのがよいのではないだろうか。




単独使用の長短


では、重ね掛けと比較した場合の
単独使用の長短について考えてみよう。

(1)
まず言えることは、単独使用だと
重ね掛けよりも軽くてすむので
うっとおしさが少ないということである。

(2)
そして、重ね掛けではハズキの鼻当てが当たる
鼻の側面は、あまり上に持ってこれないが、
単独使用であれば、それをかなり上に持って
これるから、やはりその点でのうっとおしさが減る
ということもある。


ただし、Part1以降のハズキの鼻当ての
位置からして、鼻当てを鼻の横に当てる位置が
上に来れば来るほど、下向き視線がレンズから
はずれやすくなるので、鼻当てを上めに当てる
といっても、限度はあるのだが……。

なお、鼻の皮膚の内側は、上半分は鼻骨であるが、
下半分は軟骨であり、
そこに物が乗っかる感触としては、
軟骨部分のほうが気持ちが良いものではないし、
負担感が増すのが普通である。

ハズキ「ペア」ルーペの設計者は、そのことが
わかっていたから、鼻当てをレンズの上部につけて
鼻当てを鼻骨の部分に当てても
レンズがそこそこ下に来るように
したのではないかと、私は推察する。

(3)
それと、2枚のレンズを通してものを見る
「重ね掛け」よりも、視線が通過するレンズは
1枚だけの「単独使用」のほうが、視界全体の
スッキリ感は、やや勝る。


以上が、重ね掛けに対する単独使用の
アドバンテージである。
その逆はというと、

(4)
重ね掛けに比べると、単独使用では
見え方の満足度の確実性(視距離やはっきりさなど)が
比較的低い。


その理由は、上記の「単独使用が有効な場合」の
記述に詳しく書いたし、あとで別項で述べる
「重ね掛け」の場合の記述の参照していただくと
さらによくおわかりいただけると思う。
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